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百年企業のれん三代記

神田で三代以上のれんを守ってきた老舗にスポットをあて、初代から現在に至るまでの歴史を写真と文章でご紹介します。

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第6回 株式会社山形屋紙店

お話:3代目 穣夫人・田記この子さん (記事公開日:2011年6月7日、文:亀井紀人)

■初代・俵次郎

 武州八王子横山町に生まれた俵次郎が、江戸本石町一丁目(現在の日本橋本石町)の紙問屋・山形屋松本又右衛門の所へ奉行に出されたのは13歳、元治元年(1864)の時です。
「幼少にして世間の風波に曝されることになったのだから、私の少年時代は決して幸福なものではなかった。 —中略— 子供心にも一旦縁あって紙屋に奉行することになった上は、飽くまで紙屋を天職と考え、紙屋として成功して見せるぞと堅い決心を持ったものである。そして小僧となった翌年即ち14歳の春から17歳まで夏冬かまはず毎晩冷水を浴び、紙に関係のある商人として成功するようにと神様にお祈りしたものであった。」(一紙商の回顧〔「紙業世界」昭和6年・岩波書店発行〕より)
 奉行先の紙問屋には7人程の店員がいて主に幕府時代には大小名、旗本等の屋敷へ紙を商っていましたが、後継者に恵まれず松本家は絶えます。後、俵次郎が松本家の墓を守ってきたご縁もあり、明治12年(1879)神田神保町で山形屋紙店として独立。俵次郎28歳の時でした。
 独立するにあたって、営業所となる物件を方々探し廻ったようですが、現在の神田神保町の場所に落ち着きました。当時は、明治10年創業の有斐閣さんと一緒の三軒長屋でした。
【俵次郎の回顧録】
 昭和6年発行の「紙業世界・岩波書店刊」に掲載された。
【東京紙商組合の「定」】
 明治35年に出された紙商店としての「定」。「取引は総て、現金をもって旨とす」の文字も。 

■2代目・伝吉

 初代の俵次郎は子供に恵まれませんでしたが、青梅の臼井家から養子として伝吉を迎えました。私の父である伝吉は、堅実な人でコツコツ本当に良く働いていました。一番鶏が鳴いた頃まで夜通し働き、夜が明けてしまうので、慌てて店を閉めるという日がよくあったほどです。
 どこへ行くにも歩き、皆が電車で行く遠方でも歩いていました。そのお陰もあってか、104歳という長寿を全うしました。
【2代目・伝吉のポートレート】
 
【柱に大正元年の墨字の年号がある蔵の中】
 関東大震災とその後の戦災にもめげず、蔵は今でも健在で、たくさんの紙の保管場所となっている。

■3代目・穣、この子

 2代目伝吉も子供に恵まれず、伝吉の兄の子を養子として迎えましたので、私の夫であった3代目穣は、伝吉の甥っ子にあたります。引き継いだのは23歳の時でした。穣は、父である伝吉とは性格は違いますが、仕事熱心なこと、堅実なことは初代から続いて、しっかりと守られています。
 戦後間もない時期、食料が配給制だった頃には、配給されるふくらし粉用の袋を一手に引き受けるなど、社交的な夫は積極的にまた多方面に渉って営業をしてくれました。よって主人のお陰で、沢山のお得意様が出来ました。宮内庁御用達になったのも、主人の時代からです。
 主人の口癖は「和紙は生き物、大事にすれば千年だってもつ。手間のかけ方が洋紙とは比べ物にならないもの」いつもそう言っていました。
 昭和61年にビルに建替える時、「1階を店舗にするから、お前の好きなようにやりなさい」と言ってくれ、私の代で初めて小売をするようになりました。
 始めは、父や主人が作った大福帳や、和帳を閉じたものを売ったりしていましたが、やがて文具である伝票やノート類、そして現在は4代目である長男常光の嫁の有子さんを中心に、スタッフが今の時代に合った和紙によるオリジナルな商品を店頭に並べて、評判がいいのですよ。卸だけでは、山形屋紙店の名は世間に知られませんが、小売をやったお陰で神保町のさくら通りに和紙の店があると、皆さんが覚えて下さるようになりました。
【3代目・穣、この子のポートレート】
 
【穣氏が作った田記紙店の大福帳(江戸時代、商家で使われていた帳簿)】
 丈夫な和紙で作られた大福帳は、火事の際、井戸に放り込み、鎮火後取り出し、乾かしてまた使えるように水に強く作られていた。

■4代目・常光、有子

 2代目、3代目となんとか養子で継承してくることができましたが、4代目は男の子に恵まれ、夫の後を継いでしっかりと頑張ってくれています。
【4代目・常光、有子夫妻のポートレート】
【店頭に並ぶ山形屋紙店のオリジナル商品】
●株式会社山形屋紙店
東京都千代田区神田神保町2-17
電話:03-3221-7829
http://www.yamagataya-kamiten.co.jp/

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