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KANDAルネッサンス 106号 (2017.11.25) P.1
【松栄亭】
なかだえり

 渋い飲食店がひしめく神田淡路町界隈。こちら洋食の松栄亭もまた1907年に創業、今年10月10日には110年を迎えた老舗だ。
 とはいえかわいらしい外観にこぢんまりした店内は、懐かしくほっとする雰囲気。厨房には4代目・堀口毅さん(54歳)が立つ。お目当の名物料理の「洋風かきあげ」(950円)は調理に時間がかかるということで、早速注文。待つ間にワクワクしながらお話をうかがった。
 初代・堀口岩吉さんは元は帝国大学で哲学などを教えていたラファエル・フォン・ケーベル教授のハウスコックをしていたという。お宅に教え子の夏目漱石が遊びに行った際、何か料理をつくってあげるようにとオーダー。そこで木製冷蔵庫のあり物の豚肉や玉ねぎ、卵を小麦粉でつなぎ、即席でフライにしたのが「洋風かきあげ」だった。
 その後、第一次世界対戦のため教授が帰国し失業。かつてこの付近にあった神田青物市場(やっちゃ場)の商い人を相手に松栄亭を開業した。その時に「洋風かきあげ」の名で正式にメニュー化。以来、創業当時のレシピを守りつづけている。
 さて15~20分ほどじっくり揚げられたその一品は、なんとも素朴な佇まい。厚みがありゴロンとボリューム満点。外はしっかり、中はふっくら。自家製ラードがとても軽い。そういえば多くのメニューにこのラードを使うそうだが、店内は油くささがまったくない。丁寧に精製した仕事の賜物だ。薄く塩味がついているが、ウスターソースをかければ洋食らしさが増す。ほかのメニューも食べてみたくなる。
 かわいらしいと感じた外観は実は、父である3代目を一国一城の主にしてあげたいと、城をモチーフに毅さんがデザイン。2003年に建て替えたこだわりの建物は、すっかり街に溶け込んでいる。

●松栄亭
千代田区神田淡路町2-8
TEL:03-3251-5511
平日 11:00~14:30、17:00~19:30
土曜 11:00~14:30
日祝休

なかだえり
岩手県一関市生まれ。日本大学生産工学部建築学科卒業。法政大学大学院建築科修士課程修了。陣内研究室。現在、東京・千住に在住。フリーランスで本のさし絵、建築設計、執筆など多分野で活動中。著書に「東京さんぽるぽ」(集英社/2010年)、「奇跡の一本松―大津波をのりこえて」(汐文社/2011年)、「駅弁女子―日本全国旅して食べて」(淡交社/2013年)、「大人女子よくばり週末旅手帖」(エクスナレッジ/2015年)などがある。
HP:http://www.nakadaeri.com

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