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KANDAルネッサンス 109号 (2019.06.25) P.1
【提灯問屋「吉野屋商店」】
なかだ えり
 
 神田祭では町会名の描かれた高張提灯を先頭に、多くの提灯が宵宮を彩る。
「神田のまちと人と祭と共に家業をつづけてきました」そう話すのは、提灯問屋「吉野屋商店」の吉野由衣子さん。療養中の7代目・吉野喜一さんに代わって、店を支える娘さんだ。
 創業は1855(安政元)年。徳川家に仕えて三河から江戸へ来た武士の末裔、吉野善兵衛によって歴史ははじまったと伝わる。武家屋敷だったこの界隈も、幕末になると生活のため内職をするようになり、提灯描きをはじめ、やがて専門店となったという。提灯づくりは分業で、和紙や竹ひごの産地で白張までの作業をし、江戸で文字や紋を描いて完成させる。
 たくさんあった卸問屋も今では数件となり、手描きの職人を抱えるお店も少なくなった。
 職人の内川さんがこの仕事に憧れたのは、高校生の時。以来、好きな仕事としてやり甲斐を持ち、技を磨きつづけている。使われる書体は“江戸文字”。遠くからでも読みやすく、力強くてかっこいいのが特徴だ。提灯は使われる場所ごとの景色を想定し、見え方を考慮して制作。丸みのある上下がすぼまった面に、見上げた時に美しく読みやすいバランスで文字を描く。いわば究極の3Dだ。
 そうして手描きした提灯は神田祭をはじめとし、関東から東北まで多くの神社・仏閣用に大提灯や、祭礼提灯として納められる。個人でも盆提灯、結婚式、海外へのご贈答品として人気。内川さんは「お店のロゴやアルファベットなどを描くのもおもしろい。自分の描いたものをあちこちで見られるのがうれしい」という。歌舞伎座の地下で存在感を放つ直径2.7mの大提灯も吉野屋の仕事だ。
 一方、由衣子さんは現代の提灯のあり方を提案している。家業を自然と受け入れ、大学院では江戸文学を専攻し、歌舞伎や日本画など江戸の伝統文化に親しんできた。またここ秋葉原という環境からアニメも大好き。その好きなことをいかし、若いアーティストのデザインによる展示や、手塚プロとのコラボ商品も企画。各地で提灯絵付けのワークショップも行っている。
 伝統的な職人技を受け継ぎ、江戸の粋に現代の感性を織り交ぜ、新たな提灯づくりに挑戦している。

●提灯問屋「吉野屋商店」
東京都千代田区神田佐久間町2-13
TEL:03-3866-2935
http://www.e-yoshinoya.jp
現在、店頭販売なし。ネット、電話注文。個人購入可。

なかだえり(イラストレーター)
1974年岩手県一関市生まれ。日本大学生産工学部建築学科卒業。法政大学大学院建築科修士課程修了。陣内研究室。現在、東京・千住に在住。アトリエにて水彩画教室開催中。著書に「東京さんぽるぽ」(集英社/2010年)、「奇跡の一本松―大津波をのりこえて」(汐文社/2011年)、「駅弁女子―日本全国旅して食べて」(淡交社/2013年)、「大人女子よくばり週末旅手帖」(エクスナレッジ/2015年)などがある。
HP:http://www.nakadaeri.com

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